以前、Premiere Proのエッセンシャルサウンドについての記事を書きました。
複数の音声やBGMなどの音量のバランスを、まとめて自動で調整してくれるという便利機能です。
動画の「音」問題はこれで解決!と思っていたんですが、もうひとつ大事なポイントがありました。
それは動画全体の「音量」です。
プロがスタジオで編集するのと違って、個人の場合はパソコンもスピーカーもイヤホンもバラバラ。
なので自分の編集環境ではちょうどよくても、いざ動画を書き出して別の環境で見てみると「あれ?音が小さい(大きい)」となってしまうことがあります。
そこで、編集する側として意識しなければならないのが「ラウドネス値」というもの。
ラウドネスとは人が感じる「音量感」を数値化したもので、単位は「LKFS/LUFS」で表されます。
1LKFS=1dB(デシベル)に相当します。
動画をアップロードする際には、このラウドネス値が重要になってきます。
ラウドネス値って?
ラウドネス値の最大値は0(ゼロ)で、表記する場合は「-○LKFS(○の中は数字)」のように書きます。
この数値がゼロを超えると音割れが生じてしまいます。
プラットフォームによっては推奨のラウドネス値があり、例えばテレビ放送の推奨値は-24LKFSだそうです。
そして、Youtubeの推奨値は明示されてはいませんが、「-14LKFS」と言われています。
Youtubeのラウドネス値
Youtubeでは、アップロードした動画が「-14LKFS」を超えていると自動で補正がかかり、音量が大きくなりすぎないようになっています。
※ちなみにニコニコ動画では「-15LKFS」を超えると補正されます(参照:ニコニコ動画のラウドネスノーマライゼーション(自動音量調整機能)について )
ただし、音量が小さい場合は補正はかからないので小さいままです。
なので、自分の環境でちょうどいいと思っていたのにアップロードしてみたら音が小さい、ということも起こるわけですね。
すでにアップロードした動画で補正がかかっているかどうかは、動画の「詳細統計情報」から確認することができます。
確認するには、動画の上で右クリックして表示されるメニューから「詳細統計情報」をクリックします。
すると画面の左上に詳細統計情報のボックスが開きます。
上から4番目の「Volume / Normalized」というのが音量に関する項目です。
この動画では「52% / 47% (content loudness 0.9dB)」と表示されています。
これは左からそれぞれ
- Youtubeの動画プレイヤー上の音量 = 52%
- 補正後の音量 = 47%
- 基準のラウドネス値からどのくらいオーバーしているか = 0.9dB
を表しています。
この動画の音量は基準のラウドネス値を 0.9dB 超えているので、実際は 52% のところを 47% で出力している、ということですね。
もう一つの例を見てみましょう。
こちらは
「52% / 52% (content loudness -4.3dB)」となっています。
基準値から -4.3dB 低いので補正はかからず、実際の音量がそのまま出力されています。
プレイヤーの音量を上げても常にマイナスの状態なので、視聴環境によっては小さく感じられるかもしれません。
このような状態を防ぐため、動画を制作する際にはラウドネス値を頭に置いて編集をするとよいでしょう。
Premiere Proでラウドネス値をチェックする
編集中の動画のラウドネス値は、Premiere Proでチェックすることができます。
対象のプロジェクトのオーディオパネルでオーディオトラックミキサーを開き、左端の上にある小さい「>」をクリックします。
エフェクトの選択メニューから「スペシャル>Loudness Rader」を選択します。
小さく「Loudness Rader」と表示されている部分をダブルクリックします。
Loudness Raderがポップアップ表示されるので、動画を再生すると測定が始まります。このとき右下に表示されているのが、この動画のラウドネス値です。
動画の再生が終わり、測定が完了した際の値は「-23.3LKFS」でした。Youtubeの推奨値より小さいようですね。
この数値を見ながら、動画全体の音量を調整しましょう。
Premiere Proで書き出す際に「ラウドネス値の正規化」を行う
手動で音量を調整するのが難しかったり、クリップの数が多くて調整が大変!といった場合には、動画を書き出すときに一括で調整してくれる機能があります。
「ファイル>書き出し>メディア」を選択します。
書き出し設定のウィンドウが表示されます。「エフェクト」タブを選択し、下へスクロールして「ラウドネスの正規化」にチェックを入れます
「ラウドネス標準」のプルダウンで「ITU BS.1770-3」を選択し、「目標ラウドネス」でYoutubeの基準値である「-14LKFS」と入力します。
あとはいつも通り書き出せばOKです。
動画の音が小さすぎたり大きすぎたりすると、視聴者にとっては結構ストレスになったり、離脱の原因にもなりかねません。
編集の際にはプラットフォームに合わせたラウドネス値になるよう心がけましょう!