先日、男性VTuberが伸び悩む問題が話題に上がっていました。私も一男性VTuberとして、この問題について少し別の角度から考えてみたいと思います。
また、VTuberを始める人の多くが「お金を稼いで会社を辞め、自由な人生を謳歌したい」という目的をもっているのではないか――その点も含めて記事にまとめました。
結論から言うと、そもそも「男性VTuberが伸びづらい」というよりも、「男女とも個人VTuberは伸びづらい」というのが現実です。
芸能界と同じ「圧倒的才能」の世界
まず前提として、V活動というのは芸能界と同じです。圧倒的に才能が評価される世界です。才能✕努力の世界です。
普通では成功できません。そして才能に恵まれていても厳しいです。
圧倒的でなければ成功できません。
この時点でまず、男女関係なく厳しい世界なわけです。
特に現在は、ホロライブやにじさんじなど企業勢が、VTuberを楽しむ人達のパイを総取りしているような状態です。
彼らには資金力があり、クオリティが高いコンテンツを世に出すことができ、そして激しいオーディションを勝ち抜いた才能ある人達がそこからデビューします。
「金✕才能✕努力」。スタートラインからして違いすぎます。
これは企業が素晴らしいです。よくやっています。そして視聴者に良質なエンターテイメントを届けています。
あたりまえですが、視聴者もそっちを見ます。必然です。
視聴者から見れば、企業も個人も関係ないです。とにかく面白い、良質なエンターテイメントが見たい。見せてくれるほうを見るだけです。その結果、個人が企業に負けているだけです。
個人が企業に勝てる「2つの武器」
では個人に勝ち目はないのかというと、少ないですがあります。
一つは「継続」です。
企業はやはりビジネスです。ビジネスが成功していれば続けられますが、失敗すれば止めざるを得ません。またタレントの卒業に対しても現状は無力です。引退=キャラの死です。
ですが個人勢は、自分の心が折れない限りは基本ずーーーっと続けられます。ビジネス的に利益を出していなくてもずーーーっと続けられます。これが一番のメリットです。
もう一つは「自由」です。
投資家の顔色を伺わなくていいということです。触れてはいけない話題がないということです。表現の幅が広いとも解釈できます。特定の分野で嫌われているAIも使用することができるでしょう。個人勢のメリットはそんなところです。
なぜ多くの個人勢は辞めていくのか?
「でも個人勢でも辞める人多いですよね?」って思うと思います。私もそう思います。
なぜか。
それは彼ら・彼女らの目的の8割が「自由な人生を謳歌したい」だからだろうと思います。
分かりやすく言えば「金銭的に成功したい」です。それと同じくらい「承認欲求を満たしたい」もあるかもしれません。
社会的、市場的な大成功までは望んでいなくても、「会社を辞めて自由な人生を謳歌したい」、つまり「月20~30万くらいでいいから稼げるようになりたい」を目的とする。そして、それを達成するための手段として「VTuber活動」を選ぶ。
しかしそれは、もっとも成功率が低い方法を選んでいるだけです。
「会社を辞めて自由な人生を謳歌したい」を目的とし、月30万程度稼ぐ方法なら、投資運用や、3Dモデルを作れるようになってBOOTHなどで販売するなど、様々な方法があります。
なのにもっとも成功確率が低いであろう「VTuber活動」を選んでしまう。つまりお金目的でVTuberをする。
しかし稼げないから「会社を辞めて自由な人生を謳歌したい」が達成できないとわかり、辞める。ということになるわけです。
では、なぜわざわざ「VTuber」を選ぶのか。
それはやはり、一度は目指したタレント、有名人、要するに華やかな「特別な存在!」「何者かになる!」それに近い憧れがあるからでしょう。
ですが、「会社を辞めて自由な人生を謳歌したい」が一番の目的ならば、もっと別の確実な方法があります。
次のパートでは、VTuberというものが直接客を相手にする「サービス業」であること、そしてその競争が如何に難しいかということについて説明していきます。
サービス業としての致命的な勘違い
「伸びたい!」と願う多くの個人VTuberが、「自分が夢を見るため、自分の夢を叶えるため」にその活動をやっています。
つまり、「客に夢を見せることを考えていない。もしくはその割合が極端に少ない」ということです。または「楽しんでいる私を見て欲しい」といった考えでやっている人が多いということです。
飲食業で例えるなら、本来は「美味しい料理を食べてもらいたい」「お腹いっぱい食べてもらいたい」というのが、お客に対するサービスの筋です。
しかしそこは考えず、「私の料理をできるだけ高く買って欲しい」「私が料理を楽しく作っているところを、時間を払って見て欲しい」と言っているだけなのです。
VTuberもとことんサービス業です。客(視聴者)が欲しているものを提供しなければ見返りはありません。
つまりVTuberで活動している人は、「お金やそれと同等価値の時間を支払ってでも、見たいと思えるものを提供しているか?」ということです。男女に関わらずそういうことです。これが伸びる・伸びないの差です。
しかも、提供するものは料理のような具体的なものではなく、「面白さ」といった、ふわっとしたものです。
おまけに、VTuberが提供するメインコンテンツはタダで視聴できます。つまり価格競争ができません。
例えばVTuberで多く利用される「歌ってみた」。これにはMixの人が活躍します。Mixする人に1万円くらい払うわけです。
VTuberで1万円稼ぐのと、Mixで1万円稼ぐの、どっちが簡単ですか?
おそらくMixのスキルを習得し1万円稼ぐほうがより確実でしょう。しかもMixは価格競争ができます。「1万円で高いなら5000円で受ける」といったことが可能です。
お金を稼ぐならVTuberをやるよりMix師になったほうが早いはずです。なのに、そうはならない。
それは自分の望む姿とは異なるからでしょう。「表舞台で華やかに活躍したい」という思いがあるからではないですか。
また、Mixのような技術を習得するのは、コツコツと積み重ねる勉学の世界です。簡単に言えば地味で、身につけるのは大変です。しかし、だからこそそれを持っている人は必要とされるのです。
話を戻して、VTuberって何で競争しますか?
面白さとか可愛さとか、そういう明確な差がつけられない、競争しづらい部分です。しかもそこには、無料で最高品質を提供する企業勢が立ち塞がっているわけです。
そして、「面白さ」という数値化できないところで競争しなければいけません。
面白さを数値化できるとしたらライブの視聴者数(同接)です。しかしこれは、「人は、人が集まるところに集まる」という残酷な理論で動いています。
つまり、伸びていれば更に伸びるし、伸びない人は一向に伸びない、ということです。ではどうやって最初の人を集めるのかということになります。ニワトリが先か卵が先か、みたいなものです。
とにかく言いたかったのは、価格競争できないという点で、VTuberで売れて稼げるようになる勝負をするのはあまりに難しいということです。
次のパートでは、やはり避けては通れない「男女差」というデリケートな部分に踏み込みたいと思います。
残酷な数字が示す「男性市場」の狭さ
ここでデリケートな問題になりますが、この視点をぼかしては何が何やらになるのでちゃんと書くことにします。
なぜ男性VTuberが(特に稼ぐという意味で)難しいのか。
VTuberの活動は、男性向けのそういったお店(キャバクラやガールズバーなど)や、女性の向けのそういったお店(ホストクラブ)の要素を大いに含んでいます。ガチ恋営業なんて言葉もあるくらいですから。
そうなったとき、現実の市場はどうか? 店舗数を比較したいと思います。
<比較結果:警察庁のデータと業界概算による>
- 女性が接客するお店(キャバクラ・社交飲食店など)
警察庁の統計(令和4年)では、風俗営業許可(1号営業)を受けている店舗は約6万3000店です。全国津々浦々、駅前には必ずあります。 - 男性が接客するお店(ホストクラブ)
業界最大手のポータルサイト等に登録されているホストクラブ数は、全国で約1000〜1500店程度と言われています。その多くが特定の大都市の繁華街に集中しています。
つまり、市場規模にしておよそ40倍〜60倍の開きがあります。
これは単純に、VTuberが提供しているものと男女の需要の違いです。
男性というだけで稼ぐのが難しいジャンルなのです。男性は「名前をつけて保存」、女性は「上書き保存」などと言われたりするように、男性ファンはあっさりそういう(疑似恋愛的な)方向にお金を落としやすい生き物です。
つまり、女性VTuberも競争が厳しいですが、男性VTuberは「そもそも市場が極端に狭いため、もっとも厳しい」というだけの話しです。
私の生存戦略:目的と手段の「分散」とクリエイターの矜持
私はしっかり目的、そしてそれを達成するための方法・手段を明確にすべきだと思います。
「会社を辞めて自由な人生を謳歌したい」ならなんでもいいからお金を稼ぐ。そして自由な時間を手に入れてから、VTuber活動をやればいいというわけです。そうすればゆったりとした気持ちで活動に臨めるはずです。
それからもう一つ、自分がやっていることに自負を持つということです。数字なんか関係ないと思える自負です。
私は、「私の動画を見ないのは、世の中の損であって私の損ではない」と思っています。
再生数が低いからといってモチベーションは下がらないし、止めようとも思いません。
「創りたいから創る」
その初期衝動に殉じるだけです。それ以外は不純物。創作者とはこれくらい強靭であるべきだと思います。
私の動画を見てくれれば分かると思います。 伸びてなかろうが、やってることや技術はかなりのモノをもっているな、と思うはずです。「ああ、これなら何らかの仕事は依頼されるだろうな」って思うはずです。
3Dモデリング、3Dアニメーション、After Effects、Photoshopなどなど、そういったスキルを習得することが、稼ぐ意味でも表現する意味でも自負心を獲得する意味でも重要でした。
私にとってVTuberは、表現したいことの手段であって、お金を稼ぐ手段ではありません。お金を稼ぐならVTuberよりも別の方法のほうが簡単で効率的です。
つまり、
- 表現したいこと … VTuber
- お金を稼ぐこと … 3Dモデリングやアニメーションや動画編集や投資など
- 承認欲求 … 家族と友人、一緒に動画を楽しんでくれる人
と明確にし、その目的毎に方法を分けています。
私に倣って(ならって)などと偉そうに言うつもりはありません。私なんてできていないことだらけですし、ちっぽけな存在です。
ただ、一つの考え方として取り入れ、あなたの中の可能性を広げるヒントになればと思って例を挙げただけです。
結論:個人勢は「伸びなくていい」
成功するには男女ともに圧倒的な才能が必要です。
一目瞭然の画力だったり、歌を聞けば出だしの数秒で「うまっ!」となったり、圧倒的な知識だったり。どんな人が触れても一瞬で「あーこの人は凄い人だな」と思わせる能力とその人の魅力が必要です。
そしていずれにしても、エンタメを届ける上で、視聴できる限られた時間の取り合いの中で、企業勢と競争しなければいけない個人勢は勝ち目が薄いということです。
そもそも、個人VTuberは伸びる・伸びないを考える必要が本来ありません。 なぜなら伸びなくても終わらないからです。企業VTuberは伸びなければ終わります。
伸びなくて良い個人VTuberが「伸びたい!」と思うのは何故か?
それは伸びることで金を稼ぎ「会社を辞めたい」「チヤホヤされたい」を達成したいからに他なりません。
もしかしたら、もっとドロドロしたものかもしれません。
「あいつより上だと知らしめたい」
「会社の上司や同僚を見返してやりたい」
「私のほうが凄いんだ!」
「私は特別な存在なんだ!」
それをVTuberになって、沢山のファンを付けて稼いで、影響力を持って社会に自分の存在を誇示したい。そういう野心的なものもあるのではないでしょうか。
「VTuberで成功して金を稼ぎ影響力を持ちたい、その目的のためにVTuberを始めて何が悪いのか!」と言われそうですが、何も悪くありません。全然悪くありません。当たり前だとも言えます。
ただ、そのマインドでは達成することが難しいと言っているだけです。そして「会社を辞めて自由な人生を謳歌したい」という大きな目的は、VTuberよりも別の手段をとったほうが簡単だということです。
VTuber活動は本来楽しいものです。
特に個人勢なら伸びる必要などないわけですから、それを楽しめる人達だけの小さなコミュニティでも良いはずです。
そうやって長く楽しむことが企業VTuberには絶対にできない、そして個人VTuberだけに許された特権です。





