12月29日、NHKで「ドラゴンクエスト30th~そして新たな伝説へ~」という、ドラゴンクエスト30週年を記念した番組がありました。
堀井雄二をメインに、新作ドラゴンクエスト11の制作現場とドラゴンクエストができるまでをドキュメントとして放送していました。モノ作り、仕事、人生、様々な面で勉強となる話だったためまとめてみました。
堀井雄二…言わずと知れたドラクエの生みの親、シナリオを担当
中村光一…堀井雄二と共にドラクエを生み出した一人、ディレクターを担当。代表作には「かまいたちの夜」「風来のシレン」がある
鳥山明…ドラゴンボールの作者、ドラクエではキャラクターデザインを行った
鳥嶋和彦…週刊少年ジャンプ編集長、ドラクエのキャラクターデザインの仕事を鳥山明に依頼した
千田幸信…ドラクエのプロデューサー(制作統括)(1~7まで担当)現在スクウェア・エニックス取締役
すぎやまこういち…ドラクエシリーズの音楽ほぼ全てを担当
良いところを合体させる!
ドラゴンクエストは飛び抜けたオリジナリティで無から有を作ってそうなイメージですが、そうではありません。
最初のドラゴンクエストは堀井雄二、中村光一がメインとなって制作されました。
二人共「RPGを作りたい」という思いは同じでしたが、堀井雄二はウルティマが大好き、中村光一はウィザードリィが大好き。異なるゲーム性で意見が別れたそうです。
結果、2つのゲームの良いところを合体させ、ドラゴンクエストが誕生します。
何かを模倣したりすると「パクリ」なんて言われそうですが、良い点はしっかりと取り入れながらも自分たちの思想もしっかりと入れオリジナリティを生み出す。
またこのウィンドウ形式は情報が整理させ見やすくユーザーの遊びやすさを引き出しています。これはウィザードリィ、ウルティマで「こう直したらもっと良くなるのに」と思っていた改善点かもしれません。「面白い」ということも大切ですが「不要なストレス」を無くすということも大事ですね。
世界一のゲームを作る!
ドラクエのプロデューサである千田幸信は、チャリティーソング「We are the world」が「絶対に売れる」という事を前提に制作された歌だったという事を知って、ドラゴンクエストも絶対に売れるゲームを前提として制作にあたったそうです。
その際、「世界一のゲームを作る」ということを方針にし、一番最初に皆の前で宣言したそうです。会社ではよくある風景ではありますが、これはとても重要な事です。
ある縁がきっかけでドラゴンクエストの音楽をすぎやまこういちが引き受けてくれることになった時、中村光一は反対しました。その理由は「もし気に入らない曲ができたとしてもそんな大作曲家だとリテイクを頼めないから」ということでした。その時この「世界一のゲームを作る」という宣言を思い出し、中村光一を説得したそうです。そしてあのメインテーマが出来上がります。
迷ったり、立ち止まったりした時、道を見失いそうになった時、この「何を目指しているのか」という旗印がとても重要になります。
庵野監督もそうです。シンゴジラを制作する際、「誰も見たことがないゴジラを作る」と宣言していました。結果、その通りになりました。
何かを作り始める時、できるだけシンプルな言葉でどこに向かっていくのかを示すメッセージを掲げる事が大切ということでしょう。
良いモノには理由がある!鳥山明が描くモンスターは何故魅力的なのか!?
ご存知の通り、ドラゴンクエストのキャラクターは鳥山明が担当しています。その中でもとりわけ魅力を放つのがモンスターのデザインです。
鳥山明にドラゴンクエストのキャラクターデザインをお願いした少年ジャンプの編集長、鳥嶋和彦いわく、他の人に無くて、鳥山明のデザインに有るもの、それは「どのキャラクターとも目が合う」ということだそうです。
確かにどのモンスターを見ても目が合いますね。
目が合うことでそのキャラクターとユーザーとに繋がりができるような気がします。まさに向き合っているような。とても生命力を感じます。私は「魅力がある」とは感じていましたが何故かは説明できないし、分かりませんでした。だけど必ず理由はあります。
その何故を突き詰めてきちんとロジカルに説明できることが大切ですね。自身が絵を書く時、自身が何か創作する時、その魅力をロジカルに説明できなければならないということです。
その他にも「勇者の服にフードを付けてほしい」と鳥山明にリテイクを出した際、鳥山明は「できるけど、フードを付けると背中に付けた剣が取りにくい、腰に剣を付けてもいいけど勇者としてのイメージが弱まるような気がします」と言ったそうです。
「機能美」という言葉があります。アニメ、ゲームのデフォルメされたキャラクターであってもきちんと機能するかを考える。そうするからこそ動いた時に自然であり、自然だからこそ美しく魅力が出るのでしょう。
またまたですが、エヴァンゲリオンやシン・ゴジラで有名な庵野監督も同じだと思います。庵野監督は戦艦や戦闘機を描く時その中身や構造まで考えると言われています。爆発の際、その中身(構造)が見えるのも特徴の一つです。アニメという虚構に現実を色づけていく、視聴者はそのロジックを感覚的にだけれども理解して面白いと感じます。
人生はロールプレイングゲーム!
堀井雄二がサイン等をする際に好んで使用する言葉だそうです。ロールプレイングゲームの主人公は自分自身。誰かの脇役じゃない。他人の目を気にしたりせず、誰かと比べたりせず、自分の人生しっかり生きてほしい、という思いが込められているそうです。
世間体、友達の目、会社の目、SNSのフォロワーを気にしたり、様々な目が気になって自由に生きれないでいます。一体誰のために生きているんでしょうか。人生の主役はどこまでいってもあなたです。そういう哲学が込められているのもドラゴンクエストの魅力なのでしょうね。
さて、『ドラゴンクエストXI (ドラクエ11)過ぎ去りし時を求めて』の発売が2015年7月28日に発表されました。気になる発売日は今年2017年で詳細は未定です。様々人の思いと技術が詰まったドラクエシリーズの最新作。何故面白いのか?どこが魅力なのか?そういう点を言葉にできるまで考えながらプレイしてみるのも良いかもしれませんね!